『折れた腕の前に』

 レディ・メイド:雪かき用シャベル、木、鉄に亜鉛メッキ、132㎝

 

 折れた腕の前にある雪かき用シャベル、見ると心棒は中心ではなく右にズレている。当然うまく雪を掻くことは難しく、作業を続行すればシャベルの不具合は明らかになり使用不可の代物と化す。

 

 シャベルの前に立つ人の腕は折れているらしい、この対峙。

 不具合あるシャベルと不具合(折れた腕の所有)のある人物の間には冷めた空気感がある。用途における躍動、活躍が期待できない虚無感。静謐というより欠けている(マイナス)の空気感の肯定。

 

 役に立たない対。沈黙するしかない絶望(望みなし)の状況は苦しいか?

 既に判明している事実の歴然は前向きを支えない。

 息をのむしかないことの証明。不具合の実証は始まる前に決定している。この沈黙は重いが事実が発覚しなければ、整然と在る物体(雪かきシャベル)に非は無く。雪かきシャベルの抱えもつ不備も露呈することはない。

 

 目的を達成することの溝は深く、成立不可の景色は存在自体からは見えず、時間と機の不適合は予測によるしかない。

 

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより