ハマスホイの写実、静謐な空気、重力に逆らうものは無く(あるがまま)である。対象の女性は背を向けるか読書という架空の世界へと眼差しは注がれている。人物の視線は鑑賞者を見ないので、鑑賞者は画の中の人物と対峙するのが困難である。

 

 こちらに無関心な人物を描く不思議。

 描く時空・領域の中に確かに生活者としての人物は存在している、明らかに人の住居空間である。

 画面に大きく占める白い扉は室内ゆえに輝きはなく重厚な有様を醸し出しすのみであるが、この落ち着きにただならぬ空気感、雰囲気を醸し出し、生活の痕跡が垣間見えてくる。

 直線の交叉、壁面、扉の直立は不動であるが、動かぬものの沈思が画面を揺らす。

 

 見えないものの魔力、普通でないものを見る妖しさは感応である。心が感じる見えないもの(雰囲気)との呼応である。

 ハマスホイの眠った時間を掘り起こすような作画は人を魅了する。

 

 写真は日経新聞『北欧絵画のメランコリー/十選』佐藤 直樹より