『開いた扉』
扉は開閉し人を通す、生活空間の拠りどころである。
人影が無い室内は扉だけが通路のように開いており、行き来自由な空間であるにもかかわらず、閉塞感が漂っている。
画は白と黒が基調であり、垂直と平行な線の交錯は扉の質感もあり重厚感を醸している。ほの暗さのためか新しさは微塵もなく時間の経由が際立つ。
古さ(時間の経過)が室内を席巻している、まるで生きているかのように。それでいて静謐なのである。
《気配》、何ものかが潜む妖しさがこの室内の扉を通り抜けて自由闊達に暗躍し、静かな画面を揺らす。
見えない景を覗き見る。
景は雰囲気という魔物を開いた扉の中に封じ込めている。
開いているが実は閉じている、妖しく不思議な画家の息づかいの浮遊、高揚感が充満している。
写真は日経新聞/『北欧絵画のメランコリー・十選』佐藤直樹より