『エルノシア』
立ち並ぶ樹林、正面から見据えているが奥行きの距離感が定かでない、ずっと向こうが見渡せない(被っているともいえる)。
上方の滋る枝葉の部分は枝が見えず数多の葉が隙間なく重なりあい、固定化している。要するに見えるべき隙間、空間が遮断されている。ゆえにこの樹林は板状化(平面)しており周囲との関係に違和感が生じている。
あるいは孤立化している、すでに質の変異は樹林の内実をも疑わしいものに変え。樹林であって樹林ではない景と化している。
切り取られた樹林はあたかも建屋の様相を呈して上は屋根のように切断され、窓を思わせる隙間をも点在させている。
視線は地平線にあり、見上げる構図だが、樹林(エルノシア/「ハムレット」の城?)は真正面からの視線で描かれ異なる時空が複合的に収まっている。在るが無い、幻影であるのに存在を主張している不自然な現実(リアル)。
物理界で不合理なことも精神界では通用し、虚実の境界を曖昧にする。
空と林と草原と。
自然のようでまるで自然からは遠い画であり切り取られた樹林は質を置換され何かを隠す壁のようでもある。
リアル(現実)を描きリアル(現実)からは遠い深層の景色を描くという手法、内実の隠蔽は事実の告発であるという複合的な構造を証している。(手の内はこのようなものでございます)という吐露。
本当の事は見えない、しかし本当のことを描いている!という案内の一枚である。
写真は『Rene Magritte』カタログより