『呪い』
空と雲である。
空は青く、何処にも不穏の陰りはない。しいて言えば雲に少しの暗色があるが、すぐに変化を余儀なくされるものであれば呪いに一致する傾向は認められない。しかし、タイトルは『呪い』である。
感情移入。
雲(自然現象)に人の意識が介入できる余地はない。にもかかわらず『呪い』とある。呪うとは人間だけが持つ憎しみの感情であり、悪い事が起きるように願い求める負の精神状態である。手だては目に見えない悍ましい感情の迸りであり、物理的な因果関係の不成立をあたかも成立可能にと願う本来根拠のない精神状態の一端である。
S・V・O、主語、動詞、目的の単純な構造、介入するものはなく個人の中で完結する対象への一方的な負の願望。
海の水が空へ昇り、下へ降りてくる巡廻に迎合する精神は皆無であり、無関係、決して交じり合うことのない現象(たとえば雲)。
自然現象は人間の感情とは無縁であるが、自然現象が引き起こす災害を呪うことは有る。物理現象が精神現象と融合することは有り得ず、この関係に《罪》は成立しない。ただ結果としての怨みを《呪術》という超自然的手法で意図し、目的を達成させようとする悲願(呪い)は繰り返し沸き起こる自然現象かもしれない。
人間が持つ《呪い》は自然の中で融解し、永遠に接触融合することはない。
『しかし、』と人間は空(虚空)に精神(憎悪)を訴えるエネルギーを抱く。霧消したものは時に醸すものもあり、人の目に見えぬまま漂い、有ると思えば有り、有ると思っても即、跡形もなく消えてしまう感情の起伏は確かに雲に似ているかもしれない。
写真は『Rene Magritte』カタログより