『新聞を読む男』
作品(画面)は四分割されている。
同じ設えの室内の一角(定位置)である。
確かに新聞を読む男が描かれている、しかし他の三場面では不在である。新聞を読み寛ぐかの男、場所は家庭内に於ける所定の場所であるらしい。
男が、いる、いない、いない、いない…不在がちであり家庭に帰っても新聞(世間の動向)に注意が集中しているばかりの男。
可もなく不可も無いような平穏に見える男の家庭、すなわち男はマグリットの父である。留守がちの空疎は拭えない。取り付く島のない距離感を静観。
室内を見る限り男(父)は家族を守っている、豊かな暮らしぶりに破綻はない。しかし何かが欠けていた家庭内の空気を問いつめている。抗う気持ちを冷静に抑え、かつての情景の実を振り返った光景ではないか。悪はないが善の温かさも垣間見ることが出来ない殺伐とした光景。男(一家の主人)が不在がちの家庭の空疎をありのままに描いた画には静けさよりも寂寥感、一抹の不穏を感じざるを得ない。
写真は『Rene Magritte』カタログより