『軽業師の休憩』

 

 軽業師とは危険な曲芸アクロバットを生業とする人であり、身体を使って観覧者の眼差しを驚嘆させる手段を持つ仕事師の事である。

 

 常に危険と隣り合わせにある持続はさぞかし疲弊を余儀なくするだろうというマグリットの観察。かく言うマグリットの画業の真意、身内(家族)の内情をぶちまけるようなことを秘密裏にそれと判らぬように伏せている。まるで軽業師の仕事に匹敵する危険な行為である。(決して作品を解説してはならないと命令してもどこかで漏れる危惧を常に抱いている危機感)

 

 身体、手足を自由に解放する安らぎとは遠い日常だという切迫がマグリット作品には垣間見える。

 亡き両親(父母)への冷徹な眼差しは息子としての礼節に欠けるのではないか。

 露わにグロテスクなまでに曝す関係(妄想)を永久の眠りに等しい岩石の中に埋没させる、この妄想が軽業師であるわたくし(マグリット)の唯一の休息(逃げ道)であることを誰知ろうか。

 

 不条理なまでの醜悪は岩石に固めるしか手立てがない、マグリットの悲愴な息づかいが聞こえる作品である。残酷なまでの推理がマグリットの胸裏を叩く、休息は永遠の謎としてこれ以上であってはならない苦しい告白である。

 

 写真は『Rene Magritte』カタログより