『博学な樹』
知識が豊富な樹(立ち木)とか何だろう、精神性のない樹という材に多量の葉を茂らせている。ビルボケ(人体を想起させる形態)は女性を醸しているが、立ち姿は安定を疑うほどの樹木の繁りを抱えており、どこまで?という範囲は想定を超える。すなわち(博学)ということに通じるのか。
博学とは知識データの集積の過剰、総てを知っているという事実、観念の集積であり一種(神的な存在)である。
ピンクの床面は地球を模したような球体の線を思わせる。
不思議なのは影が左右の物体とビルボケの影では違うことであり、光源に差異があることである。ビルボケの影は立掛けられた壁板の方向から来ており、壁板(右)やカーテン(左)はビルボケと同じ平面上にありながら手前側からの光。(自在な光は現世にはななく、冥府の想定であり現世ではないという境界だと思う)。
描かれた対象物(壁板、カーテン、ビルボケ)は同一平面上に在るが、それぞれ支点は立証不可の危うさの中にある。つまり重力を感じないのである。
壁板の四角い通気口は《覗くこと》を想起させる。ほぼ中央の壁面には二つの眼があり、《見ること》を示唆している。見ることと見られることの重複が【博学】という怪しい時空を混在させビルボケ(樹)を成立させている。
即ちここは一つの世界、世界観であり、総括・・・何でも見て知っている霊的な仮象を現実のものを模して作り上げている思惑、願望だと解釈する。
『人の形を失った霊界に終わす母のまぼろし、幻影である』
写真は『Rene Magritte』カタログより