『深淵の花』

 

 深淵、胸裏、胸底深く人に知られず、知る由もない深層の領域。

 きっと秘密がある、語ることのない、深く沈めた思いは既に花として咲き誇っているが、誰に知らせるでもない深層奥深く秘めた心の在処。

 馬の鈴は知らせるべき報せ、しかしこの花は警告として言葉の意味を持たない告白でもある。

 

 噂、誹謗、中傷、あらゆる悪意。不条理への怒り、口惜しさ。語ることのない恥部としての記憶。黙して語ることのない真実への憤懣は閉じたままの閉鎖花である。

 言葉にした途端、汚辱にまみれ花の尊さを失ってしまう。深淵、暗く深く閉ざされた胸裏の深みに咲く花。

 わたし(マグリット)のみが知る花である

 

 写真は『Rene Magritte』カタログより