『冒険の衣服』
オサガメが浮遊(泳いでいる)ということは水の中であり海底の設定である。
オサガメに着衣はないが、刃物のような鋭い幾筋もの皮膚の有体は恐怖心をあおる。裸体の女に対して男根を思わせる頭部は意味深である。長い白髪が彼女の身体を被うが、顔や身体は若い熟女ともいえる艶めかしさがある。
異世界、質の異なる環境下で女は手を挙げ拒む風であるのは生きている証であるが、恐怖の色はない。平穏な景であり、争いや逃避という乱れも不穏さもない。
オサガメの圧力に抗う女。
この景もまた亡き父母の冥府の景なのかもしれない。床は幾重にも層が見える。時を隔てずっと遠くへ沈んでいく亡き父母の関係性。
双方ともいわゆる衣服などという物は皆無、にもかかわらず(冒険の衣服/大胆な企て)と銘打っている。
霊界での父母の関係性をマグリットの決してあり得ない空想による企てを以て《冒険、または大胆》と被せた景色だと肯定する。
写真は『Rene Magritte』カタログより