『ピレネーの城』
有り得ない光景である。
「わたしの好みは、わたしが若いころに親しんだ北海のように荒れた、暗い海の上に、しかし光の帝国のような晴れた昼間の空の中に、というのも、暗い海から堅固な城をいただいた希望の岩が上昇したように、浮かんで見えることです」というトルクツィナーの希望を描いたという。
条理に反する光景であり重力の通用しない世界、時空である。法則の正当性は人を拘束する。
解放された自由を夢想する世界観は観念からの脱却である。
この光景を恐怖と感じる叩きこまれた通念(つみ重ねられた情報)。しかし平然と真っ向から対峙する姿勢は存在を根底から見つめ直すことの根拠である。破壊ではなく構築、怖いほどの《大いなる否定》がここにある。