石段の深きところは濡らさずに雨は過ぎたり夕山の雨
石段の深きところ、足で踏む床(平面)に垂直にある壁(側面)である。
確かにここは直ぐには濡れず、だいぶ雨が降りしきったころ遅れて雨が浸透してくる部分である。
深きところの表現は詩的であり、石という鉱物に肉感的な響きを被せ、隠微な翳りを見せている。
雨は過ぎたり、濡れる間もなく雨は止んでしまった。雨は通り過ぎてしまったのである。夕山はその雨のおかげで曖昧にけぶり燻ぶったまま・・・雨(彼女)は去り、わたしは茫然と立ちすくんでいる。
夕山の淡く美しい景色の中に果たすことのなかった愛慾の影が擦過する。