『透視』

 画家が絵を描いている。
 明らかに妙なのは、鳥の卵を見つめながら、成鳥を描いていることである。

 卵が時間を経て成鳥になることは既知の事実であるが、ここには二十一日プラスの時間の空白(経過)があり、画家は見えていない景を描いている。
 既存の事実を描いているという循環、学習されたデータ(概念)は正しい、が間違っているという二つの事実を含んでいる。

 見えない時間・・・キャンバスは時を待たず前に倒れこむ。明らかに斜めに傾いており、しかもイーゼルに乗っていない(浮いている)。
 モチーフである卵はテーブルの傾きにより転がり落ちるのは必至である。

 画家の顔は落ち着き払っており、次(時間)の展開など予期しない表情である。次の展開を目の当たりにしたなら驚嘆、狼狽に変わるはずであるが、絵の中の時空は止まったきりである。

《時間のずれ》を停止した画面にとじこめた時空の奇妙さ、静かなる(虚偽の景)である。