『カルーゼル橋とオルレアン駅』

 左右に広がる橋、川の中央の支柱だけで、左右の岸にあるであろう支柱は描かれていない。広がりは感じるが、どこか心もとない印象のカルーゼル橋である。
 オルレアン駅に至っては隠れていて見えないがあの屋根がそうなんだろうかと推測するのみである。

 作品全体、距離を置いてみると、たしかにカルーゼル橋は威風堂々と在る。
 しかし、こともあろうか橋のたもとにある赤い舟に視線が走ってしまうのである。
 橋を見て、駅を捜そうとして妙に《赤い舟》が気にかかってしまう。『カルーゼル橋とオルレアン駅』なのだ、そうタイトルにある、しかし・・・。

 画面中央下の赤い舟、この《赤》の主張が意味なく心に残る。作家が『カルーゼル橋とオルレアン駅』と命名しているこの作品。
 作家の意図はつまり、《彩色の力》《彩色のマジック》における心理を隠している。

 作品の隠れた、否、作品の持つ見えない魔力(彩色の力)を誇示している。
「見えるか? さあ、どうだ!」ホッパーの声が聞こえる。

 『HOPPER』(岩波 世界の巨匠 ホッパー)より