お内儀は、腰をかけるように、とKに長椅子をすすめた。自分は、立ち机のそばにある回転椅子に腰をおろした。
「仕立て仕事は、一度も習ったことがないのですか」と、お内儀はたずねた。
「ええ、一度もありません」
「じゃ、どんなお仕事をなさっているの」
「測量師です」


☆女主人は、Kを社会から追放された人かもしれないと見て、説教台のそばの回転いすに腰を下ろした。
「先祖の傷痕を皮肉ったことはありませんか」
「いいえ、一度も」
「では何をしていたのですか」
「土地がないことに気づいた者です」
※つまり放浪者ということ。