『1-2-3 犬から出る水蒸気』

 犬から出る水蒸気・・・犬の呼吸? 生きて在ることのエネルギーの放出。存在者の周囲(世界)とのかかわり、関係性。
 見えないものを固形化する、しかも、それと知るようなイメージを排除した鋼鉄、きわめてイメージから遠いものに置き換えている。

 上へ立ち上る蒸気、それを抑え込む圧。端にはバランスを崩しかねない重し(引力)がある。犬は自身であり、生きとし生きるものの任意の呼称であるが、犬の存在はない。ただ、水蒸気めく泡(球体)の形状を暗示するのみである。

 犬から出る水蒸気は単純に上方へ立ち上っていかない。平板な板(圧力/抵抗)がのしかかり、行く手を遮っている。
 水蒸気、すなわちエネルギーの放出は生きる証であり、不透明な主張である。
 任意の犬、誰でもないが誰かである犬は、確かに生きている。生きて世界との競合を図っている。ごく小さな泡状は世界へ発信しているはず・・・けれど、留まらざるを得ない。世界(平板な板)はそれを制御し、わずかに泡の突起が残存の形跡を見せるのみである。

 任意の生き物、仮に犬(人間)として、その周囲(世界)との関係性を問うている。見えない圧(批判・中傷・嘲笑)があり、しかもそれに加担する重し(引力)まである。
 水蒸気は何時かは消失する主張(叫び)であり、日常の泡である。


 写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館