1-1-4 〔無題〕Untitled

 床に上向きに横になり膝を立てた少女の口とセミ(?)との交感が、空気感が固体化されている。
 つながっている、ということだろうか。同じ空間に生きている、つまり少女もセミ(小動物・生物)も同族であり、今を、同じ空気を享受して生きていることの具体化だろうか。

 生きて存在するものの原初・・・今、形を変化し別種になっているものの遥か遠い原初の眺望かもしれない。
 不自然に見えるものとの共通性、共感すべき連鎖の糸を手繰り寄せる幻想。

 暴力的な接合である。
《輪廻》、存在の根源、原初は時間を無視しているほどの遠い距離である。元素、原子に帰す時点にまでさかのぼらないと理解は難しい。

 しかし、作家は時間と空間の中の同時性、生命連鎖の鍵を解放して見せている。非現実から現実を探るという手法である。
 今を生きるものを同列にし、主従を解放している。


 写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立近代美術館