『ある聖人の回想』

 天と地、地の微妙、そして背景の漆黒。これは地球である。
 地球の任意の範囲をカーテンで囲っており、カーテンが創る影(光)があり、分けた空があり地がある。カーテン(幕)に描かれた空(おおぞら)、すなわち異、別に創られた空であり、おおぞらの上の水とおおぞらの下の水とを分けてある。

 生物存在の基本を満たす条件の提示、開示。
 ある聖人が成しえたとされる任意の世界観。

 ある偉大な聖人は遥かな時を経て、成しえた仕事を回想するかもしれない。この評価をマグリットは問わないが、幾たび地球が滅びた後にあっても、きっとこの想いは残存し得るのではないか、少なくともある聖人の胸のうちにおいては・・・、と考える。

 生活の規範となっている宗教への思い。
 解放されるであろう未来において、ある聖人は大いなる主張を回想するに相違ない。
 しかし、きわめてコンパクトに答えを出したマグリットの意図は、極論を避けている。


 写真は『マグリット』展・図録より