
二つの視点、地を這うほどに低い視点と中空遥かの高い視点である。海を見下ろす視点に在りながら、這うようにして波を見ている。つまり、空と地とを自在な眼差しで真っ直ぐ見ており、決して俯瞰ではない。この光景全体をさらに高い位置から見下ろすという俯瞰図ではない。天、神の眼差しではなく、現実の個人的な見解である。
巨岩石が中空に浮上しているという奇異・非現実は、精神界の質的な変換である。重力圏内にある世界に巨岩石(もう一つの世界)が浮上し、現実を切り裂いているという不条理は、鑑賞者を震撼とさせる驚異がある、脅威と言ってもいいかもしれない。
自然世界に異なる時空が介入する、二重になっているということである。
現実世界が超未来に化石と化して出現する。
巨岩石と化した過去の旧跡は、歴史の概念を集約させた記念碑的な遺物に見える。
過去・現在・未来の交錯、次元の変移、マグリットの主張である。
写真は『マグリット』展・図録より