『宝石』

 宝石、輝石、硬く美しく耐久性がある非金属の鉱物。
 作品は男の頭部と鳥の頭部が等しく箱の上に鎮座しているが、身動きできない状態であるから、双方、攻撃あるいは昵懇という関係ではない。至近距離に並置されたこの二つは何を意味しているのだろう。
 箱の内部に二者の身体が隠されていることを暗示しているのだろうか。二つは単にオブジェとしてイメージ化されたものなのか。箱には取っ手があり、開閉の可能がある、つまり単なる板の上ではないということである。蓋を開ければ当然この二物は倒壊を余儀なくされるだろう。二物の対峙ではなく、箱を交えた三物の関係性を問うものかも知れない。背景は時代を問わないグレーのベタになっている。

 男(人間)の頭脳と鳥の頭脳に差はあるか。
 箱の内部の秘密は二物に影響を与える物なのか。
 この関係性は動かないが、思考することで動き、また崩壊する。考えることで緊張感が生じてしまう。存在の根源的な問いである。

 存在するが、非存在を求める。
『宝石』とは、非存在を探求し露わにしてみせる奇跡、在るがままの状態に探りを入れ、その関係を問い明らかにする叡智のことではないか。
《ある》が《なく》、無いが在るものである。


 写真は『マグリット』展・図録より