『幕の宮殿』、被われた宮殿ということだろうか。宮殿の内実・・・変形のフレームに閉じられた世界、世界を変形させた宮殿…皇帝(支配者)の遺したもの、記念碑的な記録、過去の遺物である。語られるような権力や贅をつくした美の殿堂ではなく、歪んだパネルに収められた空疎な世界。
 緑(自然)の繁殖、天空の普遍をも支配したとの錯誤。語られた馬の鈴(伝説・風評・口伝)の収縮、それらを沈黙の虚空がつないでいる。

『幕の宮殿』は「解釈」であり、答えである。きわめて個人的な見解かも知れないが、まるでガラスの割れた破片のような態である。確固として存在した宮殿という人為的な権力の巣窟への厳しい評価である。

 しかし世界は変わらない、酷似した宮殿は形を変えて世界を制圧していく。静かに眠りについた宮殿への哀惜は平和であるが、幕を外せば繰り返される未来の展望が芽を吹くに違いない。
 永遠に閉じることのない幕は、今この瞬間にも霧散し新しい宮殿を見せるかもしれない。幕という垂直に下りる仕切り、しかし時間は止まらない。


 写真は『マグリット』展・図録より