
『幕の宮殿』
幕、覆い、カバーであり、宮殿は皇帝の住まい。宮殿の幕ではなく幕の宮殿・・・宮殿そのものが矮小化するイメージ、そして意味が霧消しているとも言える。
イメージする宮殿はどこに描かれているのか、
室内であり、床板と壁、そこに変形のフレームが六枚、その物自身が壁と平行に立っているように見えるが、それぞれのフレームが林立することなどあるだろうか。きわめて異常事態の光景である。
何気ない、何事も起きていないように見える平然、しかし奇妙というより物理的にあり得ない現象である。
フレームの中に描かれたものは、馬の鈴(伝説・風評・口伝)、森の自然、空の普遍、そして漆黒の闇が三枚のパネルをつなぐ位置に置かれている。この意味は何だろう。
歪んだフレームの自立の滑稽、嘘、虚偽の時空である。
『幕の宮殿』は、自然をも配下に置くような暴挙と馬の鈴にみられる命令/支配があり、虚偽の時空、幻想が慎ましやかなパネルと化して鎮座する光景そのものである、という告発に等しい。
写真は『マグリット』展・図録より