『禁じられら世界』

 珊瑚が見え、背景は青いカーテン状、深い海の底であるらしい。金色のソファに横たわり、頬杖をつく裸身の女。眠っているのか瞑想しているのか、女は安らいでいる。
 若々しい肉体、しかし脚は閉じられ、魚の尾ひれに変容している。再び、女としての性交はないという態である。

 空気の代りに水の世界で生きる、相の変移…すでに現世(現実)からは遠のいている、寒くも暑くもない着衣不要の異世界に生きている。生きてはいるが、現世とは隔絶された安穏な平和を得ている。

 行き来不能の『禁じられた世界』は美しくも哀しいまでに孤独であり、女の姿を保っているが女ではなく生きている。

 マグリットの考えた究極の亡母の安置エリアの幸福。母は身を瞑想に委ねている(過去に思いを馳せている)、時間はすでに止まったまま、永遠に生き続けている、少なくともわたし(マグリット)の中では。


 写真は『マグリット』展・図録より