
『星座』
星座、しかし、星座が見えるべき空は雲に被われている。果てしなく続く平原の向こうには小山があり、手前には「空気の平原」に描かれた巨大かつ異質の一葉があり、その手前には観念の受容しうる自然な樹が立っている。
これだけでも奇妙な時空であるが、さらに手前上部には緞帳が下がっている。これは室内から覗く景色なのか、あるいは天空から緞帳が下りてきているのか不明である。暗赤色の緞帳には番の鳥(鳩)が葉(オリーブ)から生えだしている。
実に全てが常識(観念の集積)からはみ出し転倒し、錯乱している。不条理の混沌ともいうべき景色を『星座』と称している。
古くからのいわれである伝説・神話を題材に星の並びに線を引き物語を紡ぎ出している星座。
その星座を地上に置き換えてみると、こんな条理を外した景色になるのかもしれない。緞帳にみる重力の有無の疑惑、平原がまるで水面のようだし、黄色くかすんで見えるのは海(水平線)ではないか、水平線を雲が隠しているような不明確な遠景。人の手で織りなした緞帳、人工的な暗赤色の彩色、中央には大家族を彷彿とさせる鳩とオリーブが象徴的に飾られている。
つまりは総てが虚偽であり、空想の賜物である。実景は空想の裏付けがあっての実景であり、空想の時空こそが実景に目覚める根幹である。
ゆえに人は空に『星座』を描き星座に遊び、真偽の狭間に安息を得たのではないか。
写真は『マグリット』展・図録より