
『空気の平原』
空気を平らにすることは出来ないし有り得ない発想であり、絶対という言葉に相当する皆無の現象である。
《無》を《有》にすり替える言葉や視覚の魔術。空気の平原を頭の中で想定すると、雲表線のようなものを無理に考えてみるが、当然該当しない。
あり得ないからである。
作品は山頂でありながら、草木も生えない岩石だらけの平地に一枚の葉がつき刺さっているというか生えている、聳えている。異様に大きく、葉の形態を辛うじて保っているがその質感を全く感じ得ない代物である。
葉にあたるのは逆光であるが、逆光に不審はなく納得の空間(景色)である。ただ違っているのは、一枚の葉のあり方が不自然極まりなく奇怪な様子を呈している点であって、自然の中に相の異なる不自然がある亀裂に他ならない。
要するに観念と観念を否定するものが同じ空間に置かれている違和感である。
一枚の葉とその周囲には見えない空気の膜がある。それは通常平原と称される平(平行)ではないが、観念を否定した世界から見ればその見えないほどの薄い幕(異なる物質/不条理)を平原と呼称していけないわけはない。条理を外した一枚の葉の世界から見た平原である。
言葉や視覚の固定観念を外す・・・自由の入口である。
写真は『マグリット』展・図録より