
前兆・・・何に対する兆しなのか。
暗い洞窟から開けた謎の山、鷲が翼を広げた形、白い雪を被っているにも拘らず勢いがある。山岳に融けるような空の色に主張はない。黒(洞窟)と白(異世界)の対比。これより先は全く異なる世界であり、行くことには決意がいるが、帰ることの出来ない巨大な溝(亀裂)がある現場である。
暗い洞窟(現世)の開口は門であり、異世界は厳然と存在している。間にあるのは深い峡谷、行きて戻れぬ祈り(精神界)は目前にある。
死の前触れだろうか。
《来てはいけない》と鷲が翼を広げているのだろうか。あるいは迎え入れようと歓待のポーズなのか。
人は考える、その是非に答えはない。しかし絶対的な答えがあるとしたら無に帰すことかも知れない。帰る場所・・・そこから生まれ、死してそこへ帰る、そことはこのような厳しい場所であったのか、繰り返す問い、答えは厳然とそこに在るのかもしれない。
『前兆』それは、死にいたる門かもしれない。
写真は『マグリット』展・図録より