『前兆』

 洞窟からの眺望、わずかに林の緑が見える。つまり手前は現世/現実である。
 覗いた光景は草木も生えぬ岩山であり、鷲の頭部・羽ばたく翼の形を模している。偶然か、必然か。
 猛禽、空の王様である。空への畏敬の念、自由への羨望。

 この光景が『前兆』であるという。
 異空間への飛行、旅立ち、隔たる向こうへの移行。兆しは現実から垣間見た虚実の混沌である。山岳が飛行物体に変異することへの判定の是非が問われる。
 
「飛べ」という指令。
 洞窟(悩み・疑問・常識への反感・・・)からの脱出には大いなる不安と危険が伴うのではないか。踏み出せば谷底へ落ちていく。連絡通路、媒体はない隔絶の世界。
 しかし、あえてこの眺望を克服する強い意志を抱いている。
『前兆』は描き手を試している。自身を問うている。


 写真は『マグリット』展・図録より