『禁じられた書物』

 Ireneと書かれた床面から突き出た指(人差し指)その上に馬の鈴が浮いている。
 指は指摘であり、馬の鈴は口外(おしゃべり)、一つ浮いているのは名指しの)指摘(論究)かもしれない。しかし、太い指は美的とは言い難い。
 何もない床面に、上へあがるための階段がついているが壁に突き当たるばかり、この先には何もない。
 空疎、論理の薄さ・・・空論を叫ぶ彼女への応えかも知れない。

 マグリットの憤懣、イレーヌに対する禁じられた思い、静かなる攻撃、イレーヌという名前は実在しない架空の名前だと思う。前出のイレーヌの肖像も然り。
 マグリットの冷静さを逆なでした首謀者、匿名の女性像で返礼したのだと思う。
 事件簿である。


 写真は『マグリット』展・図録より