『哲学者のランプ』

 哲学…辞書を引くと、「⑴宇宙・人生の根本原理や究極の在り方を理性によって求めようとする学問、⑵自分自身の経験から作り上げた世界観、人生観、理念」とある。
 マグリットはまさに哲学者に相当する理念を元に作品を描いている。
 蛇のようにくねくね曲がりながら卓の上にたつロウソクの灯り、延びている原点は明かさない。日本には邪念という言葉があるが、聖書の蛇から来ているのかもしれない。要するに自分をも欺く否定、肯定、否定、大いなる肯定の回路である。その灯り(答え)から目を逸らしている。
 しかし、その灯りは額の皺を鮮明に見せるほどにマグリットを強く照らしている。なお考えるマグリット・・・大きく長い鼻がパイプに差し込まれている、つまり(逡巡)である。考えあぐね、さらに考えている。

 マグリットの目は鑑賞者の方に向けられている。「どうかね」可否を問う眼差しである。


 写真は『マグリット』展・図録より