
『目』
画面中央に目が描かれている、周囲は覗き穴のようにベタで黒い色面に被われている。
目を見ている鑑賞者は同じく描かれた目に見られている関係にある。
目を見れば、目の機能を熟知している鑑賞者は見られていると感じてしまう。
目は、すなわち対象世界を見る器官である。見ることは見られている関係にあるという基本の論理を承知していても、見るという主体を優位に考えがちである。
《わたしが見る》のであって《わたしは見られている》という同時性を無視する傾向にあることは否めない。
つねに、《わたしは見ている》という優位を以て世界を眺め渡している。
《見ること》と《見られること》の間には心理的な壁が立ちはだかっているが、潜在意識の深い闇に霧消してしまう。見られていることを常に意識するのは自意識過剰の範疇にあり、犯罪心理などでは《見られたくない故に見ている》という現象であり、誇示心理では《見られることの快感》に行き当たる。
見ることは時空の距離間を測ることであり、対象を把握し危険を回避、あるいは遭遇を歓喜するなどの意味を孕んでいる。つまり情報処理が目の器官を通じてなされるということである。
『目』、この作品は、見ることと見られることの同時性に支えらた日常への認識を新たにするものである。
写真は『マグリット』展・図録より