酷暑の夏に酷寒の仕打ちである。夏に窓を閉じる、封鎖に等しい厳命は一見平和に見える。何事もない平穏、暴動もなく静かにたたずむ町(集合住宅に然り)。
 この建屋の地上部分が見えない、地に着いた位置が不明である。しかも上階も不明であり、左右も分からない。しかし全体がこのような閉鎖に静まり返っていることは察しが付く。

 生活者は沈黙している。夏の解放が微塵も感じられない『夏』の景色。
 支配者の影は見えないが、確実に制圧下の状態を垣間見せている。
『夏』というタイトルさえなければ、きわめて普通の景色であるが、『夏』だと限定したことでこの景色の実態が漏れ出てくるのである。

 乱れなく秩序がある景観、しかし「旗」に象徴される自由・解放がない。
 1931年、マグリットに記録を促した一枚であるに相違ない。時代の記録であり、告発である。

 写真は『マグリット』展・図録より