
夏、開放的な季節を指す。にもかかわらず、この集合住宅は並べて閉鎖的である。
石壁の頑丈な建屋、画一的な窓の作り、閉じたカーテン…夏の日差しを感じない沈黙の館である。
比して青空や千変万化の雲には、支配や強制のない自由があるが、象徴として掲げられているだけである虚しさ。住民(生活者の叫び)は、旗に秘かな告発を込めているのだろうか。
物言えぬ不穏、1931年頃の時勢の切り取りであり、いずれ世界大戦へと発展していく予兆とも思える。
《国家の令》が生活者を脅かし、同じ思考を強要する不穏である。
『夏』酷暑の季節にあっての閉鎖的な風潮、我慢を強いる憤懣からの脱出は、秘かなる自由の旗印のみに託されている。
マグリットの静かなる沈黙の告発である。
写真は『マグリット』展・図録より