
穏やかな海と空の景色である、しかし不穏な天気だという。異なる点は白い雲の形が、人間の叡智により創りされた構築物が三体並んで空中に浮上していることである。自然には決して現れ得ない形態である。
人間の想念の中でしか形成し得ない景色は地上を圧している。純白であり、軽く見えるという雲の条件を満たしたこれらに堅牢なイメージはない。もちろん永遠不滅の形態でもない。
いずれ流れていく宿命の雲に形を借用した、これらメッセージが不穏だというのである。
増幅され強く大きく鳴り響くラッパ(チューバ)は告知であり、指令である。
何よりも高い位置にある椅子(地位)、座るべき今は不明の人間(トルソ)が、次第に色を成し地上に降りてくる。即ち征服は民の自由を剥奪しかねない。
よく見ると、陸地は草木の見えない岩石の沿線である。緑がない景色は死を連想させる。穏やかに良く晴れた白い雲(?)の浮かぶ景色は《危機》を孕んでいる。
『不穏な天気』は、現実には見えない《負の予感》である。
写真は『マグリット』展・図録より