
『不穏な天気』
不穏というから何かの予兆だと感じるが、波の静かないい天気である。ただ違っているのは白い雲であるはずの位置に、白い物体が三体並んでいることである。
トルソは乳房から見ると女であるが、腕のつけ根や肩の線から見ると男である。つまり、差異を含んだ人間ということかも知れない。
チューバ(吹奏楽器)は、音を増幅させる発信源である。
椅子は、普通に考えると地位を象徴する。
これらが平穏な地上に浮上して見えている景色を『不穏な天気』と名付けている。
穏やかな景色を否定する空気が顕在しているという。美しくさえ見えるこの三体、人は描かれていないが較べるまでもなく巨大である。椅子やチューバがただ在るだけでなく人が介在する景色。
魅了されるような眺めであるが、その意味を検討すると、上からの圧力であり鳴り響く音響であり、人が隠されている。大いなる権力の爆走を予感させる静けさは否定できない。ありのままの景色を人的圧力で、制圧する。
『不穏な天気』はあくまで予兆にすぎない。しかし・・・。
写真は『マグリット』展・図録より