
パネル二つが中空に浮いている。これは見上げた視線ではない。とすると、恋人たちは中空を浮上しているのだろうか。しかも恋人たちであり複数である。
未来をつくる若者たちの視線はヒューマンスケールで測る高さではなく、超えている。何を超えているかというと、集合住宅や家々に対峙する位置であり、世間や社会を超えようとする意志(パワー)である。社会常識、通念に真っ向から挑む姿勢である。
二つのパネルは恋人という対の形であり、男女どちらというものではないが、描かれた内容は同質である。
空と雲は、変化を予感させる。そして自然回帰への自由な開放を示唆しているのではないか。散歩であれば、明確な目的があるわけではないが、新しい明日への希望が漠然と二人の気持ちに過っ照るという光景。
即ち希望的観測、未来をつくる恋人たちへの期待をこめた光景。しかし、現実は漆黒の闇であり、何があるかは不明の混沌に満ちている。画一的な部屋の窓は平和であり、抑制を暗示している。
『恋人たちの散歩道』は(背伸びせよ、超えよ、突破せよ)という静かな期待とエールである。
写真は『マグリット』展・図録より