『本来の意味』

 意味とは何であったのか。言葉、雰囲気、表情、動作、記号、あるいは作品(絵画、文芸、劇)など、人間的感覚で伝え得る内容…。
 意味とは人と人をつなぐツールの中に内在するもので、必ずしも完全ではないが、意味を読み取る力はデータの集積により判断の質は高まると信じられている。

 しかし、この画を見て『本来の意味』と提示されても明確には判断がつきかねる。黒い枠の中の黒く太い対角線は、否定を想起させる。これより先への侵入を阻むという態である。
 四分の一にある、corps de femme (女の身体)という文字、ある程度意味を想起可能にする。しかし全体のバランスから言えば通じるものを見いだせず、むしろ不明の色が濃い。レンガ(火の使用/叡智)、青(空間)、暗緑色、それぞれ言葉に匹敵する意味を所有する。以上でも以下でもない意味の範囲は主体の所有する眼識に因るものである。

 主張するものを的確に把握すべきツールが意味本来の役割である。ただ人間の感性には差異があり、各人のデータの集積は目に見えず、感知の程度は計れない。
『本来の意味』そのものに混沌の深淵が潜んでいるので、本来の定義は不確定である。


 写真は『マグリット』展・図録より