
『呪い』
呪い、何に対してだろう。AとB、対象と被対象、二つの関係が曖昧である。
雲が描かれている、雲(天空)に対して呪いをかけるということなのか…。呪いとは恨みが根底にあり、相手を強く否定し陥れる場合に使う言葉に他ならない。
青空に浮かぶ雲、一つとして同じ状況には位置しない様相である。
《時間と空間》を否定する、時間を巻き戻したいという要望、あるいはどうにもならない摂理へのもどかしさだろうか。
天空に主体性はないから、『呪い』は宙に浮くしかない。幸福は呪いの対象にはなり難い、不幸(マイナー)への祈りに美を認めるのは難しい。
千変万化の雲は、具体性を消した地上の時間を写すものであり、抽象心理である。
決して肯定的ではない悲嘆が隠れている。
写真は『マグリット』展・図録より