『恋人たち』

 頭部を白い布ですっぽり覆った男女(カップル)が頬を寄せ合い、あるいは口づけをしている画である。
 場所は海山の自然の景色、あるいは室内であるが、彼らは頭部(視覚)を隠蔽しているので、そこがどのような場所であるかを判明できない。場所どころか相手の素性すら確認できずに男と女という条件だけで好意あるポーズに興じているだけかも知れない。

 鑑賞者はこの二人の愛を肯定してこの画を見ている。そう思わざるを得ないからである。決して偶然の戯言ではないという確信は、ここには嫌悪の入るスキが認められず、平穏な空気だと理解するからである。

 男女の関係(あるいは人間関係)とは、そういう不確定なものではないか。
 頭部(顔)は見えていても、実はその内実は見えていない。たとえ愛する二人においても・・・。


 写真は『マグリット』展・図録より