
『田園』
田園にしては暗く陰鬱な画面である。
絵の中の床に交錯する線状は、地層のような印象があり、その間をくぐって凝視すると木々が逆さになっている。
手前の切り取ったような片面的な木の枝は、画面そのものを逆さにすると木の根になる。
つまり、上下のない世界である。上下がないということは重力の働かない仮想空間であり、重層は時間をも遡っている。《時間・空間》を現実から切り離した構想である。
美しくなく、焦点もなく、意味の分かり難いこの画は、異空間への旅を志向するデュシャンの宣言である。少なくとも鑑賞者の関心を惹くものではなく、自身のための自身の作品を決行するという意思表示である。
写真は『デュシャン』展・図録より