
『軽業師の休息』
普通の人が出来ないような身体能力を発揮し、それを生業とする。観客は「一体あの人の身体はどうなっているのだろう」と首を傾げつつも心服、感動してしまう。
もちろん、普通の人と異なる身体を持っているわけではなく全く同じである。にもかかわらず、あたかも身体がバラバラになっているような動きさえ見せるのは訓練されたテクニックに因るもの以外の何物でもない。
しかし彼もしくは彼女は考える、本当にバラバラであればどんなに楽であるかと。
あり得ない動きを要求される軽業師の苦悩は、有り得ない動きを夢想する休息の中でしか解放されることはないのかもしれない。
観客の眼差しを誤作動させる、錯覚に導く手法は非現実の夢想(休息)のなかでのみ可能となる。彼らはそこを行き来する幻想に身を委ねている。
写真は『マグリット』展・図録より