『発見』

 裸婦である、その肉体に木目が描かれている。人体が次第に木目(木材)に変容していく。通常なら決して結びつかない物理変化である。
 ただ、母親の死に直面した幼いデュシャンの目に映った母の死は、すでに木箱(棺)に納められた姿だつたのだと思う。
 あの木箱の中に母がいる。母は死んで木箱の中にいる。木箱は母になり、母を思うと木箱が浮かぶ・・・。デュシャンの胸に刻まれた衝撃の映像はそのまま物理界の法則を超えて精神的な因果に定着したのだと思う。
 
 理屈抜きの真実というものが個人の歴史の中に刻まれることはママある。誰か、たとえば鑑賞者に向かって理解を得ようとして描いているのではない。わたくしデュシャンの記録であり真実を、胸の中に押しとどめていた真実を画家の宿命としてここに記録されねばこの先(未来)へ進むことは難しい。

 決して忘れない、この強い思いが沈黙を打破し、この画を描かせたのではないか。
《解釈無用!》烈しい吐露は人を寄せ付けない。


 写真は『マグリット』展・図録より