
『天才の顔』
確かに顔である。石膏で模られたデスマスク(のようなもの)、右の目と左の頬のあたりがくりぬかれ空洞になっている。
もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。(略)もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。(マタイによる福音書より)
神の箴言と逆になっている頬は、拒否なのか、倣っているのか・・・。要するに、《神》を暗示している、具現というべきか。
マスクは細い板状のものの上に乗っている、任意の個所にコの字型の刻みが有るが、明らかに人為的な作為である。しかしマスクに血肉があるとは思えない。すなわち、人が作り上げた像である。板状の下は流動する何か…水か空気なのか判別不能であるが流れている。
不可逆である時空。微光、黒い森、にも拘らずマスクの純白。怪しく不条理な世界。
これが『天才の顔』であるという。人の空想が作り上げた夢想に等しいかもしれない。
写真は『マグリット展』図録より