
このボトル・ラックの形、何とも均整がとれ円光のようである。並べて均等に配置された瓶の差し入れ口は斜め上方を向きエネルギーを感じさせ、上に延びていく様は風が吹いてもビクともしない頑強な塔である。
祈り、あるいは祀りを彷彿とさせるこのボトル・ラックにデュシャンは魅せられたのではないか。
この物の用途はボトル・ラック、名前が示す通りの生活雑貨であり、生産者(制作者)の意図は明確である。もちろん生活は人生の要であり美的要素は望むところである。そしてボトル・ラックという命名がある以上、その範囲でボトル・ラックを感受、受け入れるに違いない。
しかし、デュシャンは、その用途を度外視した観点で心を動かされたに違いない。
第三者的立場、誰もがそう感じるであろうという想定内の感想は言葉によって促される場合が多いし、順当である。
デュシャンが私的感想(感動)を抱くときの通常(観念的見識)との差異。
《主観と客観》の間の時空を計る、その差異ある空間こそが『ボトル・ラック』の真の提示である。
写真は『DUCHAMP』(ジャニス・ミンク) www.taschen.comより