
このバランスはかなり難しい。逆さにし固定しようとする意志がなければこの形態は保てない。単に丸椅子の上に乗っているように見えるが、強い接着(ネジ留め)がしてある。つまり人為的に構築した景色ではある。
ここには微妙な均衡、危うい絶対に揺れる心理が垣間見える。
この作品に対峙する呼吸は静謐にならざるを得ない。確かな平静(例えば禅のような)を要求される景色である。
あるいは《無》であろうか。ふざけた気持や邪心は、この作品の前では弾き飛ばされてしまうような威力(あるいは魔力)がある。隠れた神力である。
美しくも哀しい音響が胸に流れる。楽しいというより静かなる対話、黙して語らぬ沈思黙考の態である。
写真は『DUCHAMP』(ジャニス・ミンク)より www.taschen.com