なぜ『花嫁』だったのか、疑問が残る。
 花嫁という人生の転機、花婿でなく花嫁を選択した心情、必然。デュシャン自身の告白にあるのかもしれない。
 この画に花嫁を想起させるものを認めるのは難しい。男女あるいは人間を表すような部分さえ見当たらず、機械的な構築である。

 切断、接続に生産的な意味を生じさせていない。それを意図したことは明白であるこの画を見ていると不思議に惑いが生じる。複雑怪奇な迷路、しかし介入できないバリアがある。どこにも指一本差し込むことができない緊張感と守りがある。圧迫感はないのに威風堂々とした空間の妙がある。何人も決して立ち入らせない強固な城、一国一城の主は、今この瞬間花嫁を自称した。

 タイトル(『花嫁』)と画の関係には深い溝がある。この関係を解くことを許さないというような深い闇である。


 写真は『DUCHAMP』より www.taschen.com