
『花嫁』
花嫁という呼称には持続がない。一時的な修飾であり、「わたくしは花嫁です」と名乗るのも違和感がある。周囲の他者からの美称であるから、ある意味(花嫁)という呼称は宙に浮いる。有るが無いともいえる実態を言及しにくい呼称がこの作品のタイトルになっている。
作品のどのパーツでもよいが、指でさし追っていくと接続すべきつながりが欠如していることに気づく。全体どこにも具体的な関係がなく切断されている。意味ありげな日常を想起できる形態もあるが、単なる寓意としての仄めかしとは無縁である。
中心にスポットライトめく光が当たっている部分がある、単にそれだけのことだと。《美・祝》のムードは見えず、華美な衣装や贅沢な食卓の影もない。
『花嫁』というタイトル、確かに存在するが明らかな実態がなく、他者からの美称であれば、本来、花嫁という言葉は固く結びつく主語(主体)が無いものである。
従って、綿密に描かれた作品の主眼は決して存在しないように意図されている。
写真は『DUCHAMP』より www.taschen.com