《地下のデイジー》

 路上にそれはあり、通行人は立ち止まるか、気づかずに躓いてしまうような作品である。
 真四角に突起した平面上には放射状に花びらのような穴が開いている。
 デイジーという名を聞かなければ謎のような穴にすぎないが、放射状ということで何らかの意味を想起することはできる。できるというよりは自然に納得のいく形、幼児でさえ太陽を描くときの光の原初であり、信仰の基軸にも因する放射状(円形)である。
 鑑賞者が目にするのはここまでであるが。《地下のデイジー》とタイトルしている。

 しかし、地下は被われている、隠された領域を指している。見えないものを視よ!というのである。

 不可解である。
 不可解なもの(世界)を感じよ!という指令でもある。擦過やこの仕事に携わった人たちはこの作品の仕組みを知っているかもしれないが、それは問題ではない。

 見えないものを視よ!と言っているのである。
 見えないものがこの地下(隠された世界)にはあると断言しているのである。

 見えるものへの確信、見えないものへの不審。これは可逆的にも正しいのではないか。
 この作品の深さである。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館