犬から出る蒸気、つまり呼吸であり、エネルギーの発散である。そして《生きていることの証明》でもある。

 それらの蒸気は水を含んだ気体であれば、すぐに周囲の空気に同化してしまう現象である。刹那的に、しかし持続する現象は決して同じ形を取らない。

 犬(生命体)の必須条件である炭酸ガス等の排出は、空気(酸素)を吸うと同時に炭酸ガスを出す装置でさえあるが、その関係の報告(質量としての具象化)は見たことがない。なぜなら数値に記録できず、なにより可視化がないからである。

 犬(生命体)から出る蒸気を凝視し観察するという試みである。
 吹き上げるUPの力(生命の持つエネルギー)、引き下ろすDownの力(重力)の均衡。
 不均衡である、ゆえにエネルギーを消費する仕組みが犬(生命体)には備わっており、重力に拮抗するエネルギー(蒸気)が必須なのである。

 エネルギーの消失(死)は、総てを地に還元させるかもしれないが、《犬から出る蒸気》は、《生きて在る必須条件》であり、《生の証明》でもある。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館