元素とは化学的に分けていって最後に得られる要素であり、ただ一種類の原子によって作られる物質。
 作品は鉄で作成されているが、鉄という意ではない。元素に残りはなく、性質を包括する抽象的な概念という見方から言えば、残り元素は非物質である感情(精神の存在)を指すのではないか。

 作品は刹那的な場面を切り取ったものであり、戦禍の惨劇、残影である。
 強力な破壊兵器、人体の損傷。悪である黒歴史への告発。ここに美はなく醜悪の露呈が言葉を失うほどに曝されている。
 事実の特記、怯え、悲しみ・・・激震は後世にまで語り伝えられるべき記録である。


 振動、地上の激震は『残り元素』。
 非物質である精神界の振動であり、正義の欠落は膨大な損傷を生む。『残り元素』はとてつもなく大きく、複雑な化合物をも生み出す元素である。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館