そのこと は、彼も忘れてはいなかった。だが、自分の肉体を頼りにできるという自信があったおれ、そういう自信がなければとうていこんな土地に出かけてこなかったはずのおれ、そのおれが、たかが二、三日の不健康な夜と不眠の一夜に耐えられないとは、どうしたわけだろうか。ここでは、どうしてこんなにどうにもならないほど疲れてしまうのだろうか。この土地の人間は、だれも疲れていない。というよりむしろ、みなが、そしていつも、疲れているが、そのために仕事がだめになるということはない。それどころか、仕事は、かえって促進されているくらいだ。
☆自分の身体を見捨てることができるということを信じていたが、どうして先祖の死ぬことができない小舟にたえなければならないのだろうか。正しくここではだれも疲れていない。あるいは現場不在を害することなしに、むしろ自制心のない疲れを要求しているようにみえる。